※は翻訳者による追記
なぜ酵母の栄養にこだわるのか?
この5年間、私たちはEscarpment Labsで、これらの疑問に答えるために熱心に取り組んできた。酵母は何を欲しているのか?酵母は何を必要としているのか?当初は推測の域を出なかったが、長年の集中的な増殖から得た研究と経験により、酵母株特有の栄養必要性について新たな洞察と理解が得られた。
私たちが酵母について語るほとんどすべての話と同じように、酵母はそれぞれの欲求やニーズを持つ個性的なキャラクターであることがわかった。ある酵母は適切な量のビタミンにとてもよく反応する。ある酵母は高比重発酵においてマグネシウムを必要とする。ある酵母は、最高の酵母であるためにFANを少し追加する必要がある。
朝食用シリアルのコマーシャルのように聞こえるかもしれないが、酵母の最適なパフォーマンスに必要な重要なビタミンとミネラルのすべてと、ブルワーのために私たちが考え出した解決策について説明する。
ビタミン / Vitamins
この物語は大量のモルトエキストラクト(当社の主要な酵母の餌)が、多くの酵母株、特にVermontやFoggy LondonなどのBritish酵において平均以下の収量しか生み出さなかったことから始まった。プロセス変数、FAN含有量、水の化学的性質を除外するために、多くの困難とともにとデータ分析を行った後、我々はビタミンに注目した。このロットでは、ビオチン(biotin)やチアミン(thiamine)といったビタミンの濃度が標準以下であることがわかった。これらのビタミンを補給したところ収量は正常に戻った。この時、酵母によってはこれらのビタミンをより多く必要とするものがあることを学んだ。
これは重要な教訓となった:麦汁は通常、酵母の健康に良いビタミン源であるが、麦汁のビタミン濃度には時々ばらつきがある。 酵母にとって重要なビタミンといえば、主にビタミンB群と呼ばれるものを指す。
チアミン(Thiamine / ビタミンB1)は酵母によって速やかに消費され、発酵中および発酵後の酵母の生存率を向上させることが知られている。リボフラビン(Riboflavin / ビタミンB2)は、重要な代謝反応であるクレブスサイクル(Krebs cycle)(高校の生物を覚えているか!)の補因子として必要であるため、酵母にとって重要である。ビオチン(Biotin)は発酵性糖類やその他の重要な酵素経路に重要である。パントテン酸カルシウム(Calcium Pantothenate / ビタミンB5)も主要な酵素機能に必要である。
イノシトール(Inositol)(またはミオイノシトール / myo-inositol)は、酵母細胞膜の構成要素であるリン脂質(phospholipids)の直接構成成分である。つまり、酵母が芽を出し、新しい酵母を作り、自らの細胞膜を修復するのに重要なのである。
Vitamin | What it does |
チアミン / Thiamine (Vitamin B1) | 酵母の生存率を高める |
リボフラビン / Riboflavin (Vitamin B2) | 代謝反応 |
ビオチン / Biotin | 糖発酵、主要な酵素経路 |
パントテン酸カルシウム / Calcium Pantothenate (Vitamin B5) | 主要な酵素経路 |
イノシトール / Inositol | 細胞膜の生成と修復 |
ミネラル / Minerals
酵母に必要なミネラルの量は非常に少ないことが多いが、酵母細胞の発育と代謝に大きな役割を果たしている。
無機陽イオンも酵母のパフォーマンスに重要である。マンガン、カルシウム、亜鉛イオンはすべて酵母の成長に不可欠である。特に亜鉛は微量しか入手できないが、主要な発酵酵素の構造と機能に不可欠であるため、他の金属イオンでは代替できない。
マグネシウムイオンは有糸分裂中の酵母の成長と分裂に不可欠である。またマグネシウムは高比重醸造のような高ストレス状況でも酵母を保護する効果を発揮する。Escarpmentでのテスト(2016年に遡る)では、マグネシウムを補助的に与えた場合、Vermont Aleは高比重醸造でより良いパフォーマンスを示した。
リン酸塩の取り込みは窒素の取り込みと連動するため、リン酸塩は酵母にとって非常に重要である。その結果、麦汁中のリン酸塩が不足すると、酵母細胞は窒素を利用しにくくなり、成長とパフォーマンスが低下する。
無機硫黄と塩化物もまた、酵母細胞がアミノ酸生産と輸送メカニズムに必要とするものである。
Mineral | What it does |
マンガン / Manganese | 酵素補因子 |
カルシウム / Calcium | 酵母の増殖と凝集 |
亜鉛 / Zinc | 酵素補因子 |
マグネシウム / Magnesium | アルコール耐性 |
リン酸塩 / Phosphates | 窒素吸収と連動 |
硫酸塩 / Sulfates | アミノ酸生成 |
塩化物 / Chloride | 細胞膜輸送メカニズム |
酸素 / Oxygen
麦汁発酵は基本的に嫌気性であるが、酸素も発酵と酵母の成長の両方にとって非常に重要である。酵母栄養剤で酸素を補うのは難しいが、酸素はビール発酵のパフォーマンスにとって重要な栄養素であると考えるべきであると我々は考えている。今後、ビール中の酸素に関する追加コンテンツを紹介する予定である。
全ての酵母に必要な栄養について学ぶ努力は、ビール酵母に最適化された当社独自の栄養ブレンドであるYeast Lightningの開発につながった。ブルワーが発酵に成功しやすくなり、酵母のストレスが軽減され、その結果ブルワーのストレスも軽減されると考えている。
歴史的に我々は他の情報源から栄養剤のブレンドを推奨してきたが、いつも物足りなさを感じていた。これらの製品のほとんどはワイン酵母を念頭に置いて配合されており、ワイン酵母はビール酵母と同じキャラクターではないことを知っていたからだ。また、ワイン酵母はビール酵母と性格が異なる。ワイン酵母には異なるニーズと耐性がある(例えば、ワインは麦汁よりも多くのFANを補給する必要がある)。
通常ビールには十分なFANが含まれているが、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素を加えることで、ビール酵母がどの世代でも最高のパフォーマンスを発揮できるようになる。そのため、Yeast Lightningを調合する際、FANの濃度を下げた。麦汁にはおそらく十分な量が含まれており、そうでない場合は、リン酸二アンモニウム(diammonium phosphate / DAP)をそのまま添加した方が安上がりだ。
麦汁には発酵を高めるビタミンやミネラルが不足しているかもしれない。Yeast Lightningでは、ビオチンとチアミンを追加配合した。これは特にHazy IPAで人気の酵母株(Foggy London、Vermont、Hornindal Kveikなど)のパフォーマンスに重要であることが分かっている。マグネシウムは高比重発酵におけるエタノール耐性の向上に役立つ。亜鉛は主要な発酵酵素が機能するために必要な重要な補因子である。
5つの異なる酵母株で麦汁を発酵させ、2週間保温した後、酵母の生存率をチェックする実験を行った。このような理想的でない条件下で、Yeast Lightningは、特に第2世代の使用において、生存率を高める結果となった。
ワイン酵母用に配合された多くの栄養剤には硫酸銅が含まれている。銅は硫化化合物と反応し、硫黄のような、おならのようなアロマを除去することができるため、酵母のサプリメントとして有用である。しかし、多くのビール酵母はワイン酵母よりも銅に敏感であるため、ワイン酵母向けの栄養剤に含まれる濃度はビール酵母に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、過剰な銅は劣化反応を加速させ強める可能性があり、新鮮なビールの酸化を早めるので、麦汁には入れたくないものだ。特にHazyなIPAには加えたくないものだ。要するに、Yeast Lightningから硫酸銅を取り除いたのだ。
プロブルワー向けにYeast Lightningが発売された。ホームブルワーからの素晴らしい栄養素への需要を認識し、我々は自家醸造サイズのフォーマットにも取り組んでいる。
All articles are translated here from Escarpment Labs are reproduced with permission.
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