※は翻訳者による追記
バイオトランスフォーメーションとは何か?
バイオトランスフォーメーションの定義は、微生物(酵母、バクテリア)によって促進される化学反応であり、ビール中の既存原料のフレーバープロファイルを変化させるものである。これにはホップだけでなく麦芽や副原料も含まれる!
バイオトランスフォーメーションは一般的に特定の化学反応に分けることができる :
- テルペンの変換 / Terpene conversion
e.g. リナロール(linalool)からシトロネロール(citronellol)への変換 : より柑橘系の特徴を生み出す - チオールの放出 / Thiol release
e.g. システイン結合した3MH(cysteine bound 3MH)から遊離3MH(free 3MH)への変換 : よりトロピカルな特徴を生み出す - グリコシド結合した(glycosidically bound)アロマ化合物の放出
バイオトランスフォーメーションに関する我々の理解と定義は常に進化しており、発酵科学におけるこの分野をエキサイティングなものにしている!
現在の未解決の質問は以下の通りだ:
——ドライホッピングのタイミングは重要か?
——ビール酵母のテルペン生体内変換を最大化するには?
アドバイス
バイオトランスフォーメーションを達成するために何が最も効果的かについては、多くの意見がある!そこで、私たちの一般的な提案を紹介しよう :
- フレームアウト、ワールプール、早めのドライホップなどレシピの早い段階でテルペンを組み込む。テルペンのバイオトランスフォーメーションには、Hydra、Vermont、Laerdal、Cerberusが最も適している。
- マッシュホッピングやワールプールなど、レシピの早い段階で放出可能なチオールを組み込む。
- 大量のホップをドライホップするのは、発酵の後半かFG(final gravity)の直前または直後にしよう。Citra、Mosaic、Galaxyなどのホップをあまり早い段階でドライホッピングすると、せっかくのデリケートで揮発性の高いトロピカルなアロマが、発酵によって洗い流されてしまう。
- ドライホッピングの比率は、使用する酵母株やホップの質と度合いによって大きく異なる。ダブルドライホッピング(例えば、FGの前に1回、FGの後に1回)は、強いホップのアロマとフレーバーを得るのに役立つ。
おすすめの組み合わせ
ブルワーや醸造所仲間の経験に基づいていくつかの組み合わせを提案している :
- Hydra + Bravo/Strata Whirlpool + Simcoe/Citra Dry Hop (balanced fruitiness, lots of citrus, hint of dank)
- Thiol Libre + Cascade/Calypso Mash Hop + Citra/Mosaic Dry Hop (citrus and white wine)
- Laerdal + Sabro or any fruity NZ hop (coconut, lime)
酵母の比較
2019年の研究では、我々は多くの酵母株で発酵させたビール中のβシトロネロール含有量を測定した。これはテルペンのバイオトランスフォーメーションの良い指標である。なぜならホップにシトロネロールはあまり存在せず、このアロマ化合物は通常、酵母によって他のテルペンから変換された結果だからだ。
テルペンのバイオトランスフォーメーションは、ラガー酵母株では低く、セゾン酵母株、野生酵母株、ベルギー酵母株、およびいくつかのドイツ酵母株で高い傾向があることがわかった。この研究では、最も”クリーン”(IPAフレンドリー)な酵母株はCerberus、Hornindal Kveik、Vermont Aleであった。HydraはCerberusとVermontのハイブリッドであるため、優れたテルペンバイオトランスフォーメーション酵母でもある。
対照的に、チオールの測定はかなり困難で高価である。我々は、Thiol Libreを生み出した2021年の研究でチオールを測定することができた。
一般的に、ほとんどのビール酵母はチオール放出が苦手で、配糖体放出も苦手である。”天然”ビール酵母の中では、Ebbegarden Kveikやいくつかのセゾン酵母がチオール放出に優れている。Thiol Libreのような新しい酵母が生まれたのはこのためである。
その他の有機体
バイオトランスフォーメーションを考える上で、他の醸造生物を無視することはできない!例えば、ブレタノマイセス(Brettanomyces)はビールのフレーバープロファイルを大きく変えることができることから、天然のバイオトランスフォーメーション大国と言えるかもしれない。また乳酸菌によるバイオトランスフォーメーションは、非常にユニークなフレーバープロファイルを生み出すことができることがわかっているので、今後さらに研究が進むと思われる。
その他のリソース
- Biotransformation: Keep Your Hops Alive(翻訳済)
- Designing A Beer For Biotransformation(翻訳予定)
- Guide To Yeast Flavor And Biotransformation(翻訳済)
All articles are translated here from Escarpment Labs are reproduced with permission.
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