【レシピ構築】狙ったアルコール度数のビールを造るには part1【Recipe Building】To make beer with the targeted ABV. part1

初めて自分のレシピでビールを作ろうと思った時に、一番つまずいたポイントはアルコール度数だった。今はエクセルで自作したレシピツールを使っているが、これを作るためには醸造に関する単位や計算を隅々まで理解する必要があり大変だった。未だにIBUとストライクウォーター(マッシングに使う水)の温度、リフラクトメーターの調整などはBrewer’s Friendのツールを使っている。

自作レシピツールの一部。在庫管理ツールも自作した。

参考にしたサイト↓

これらを読み込めばなんとか理解できると思うが、自分で手を動かす必要があると思うで、ここで復習も兼ねてまとめてみることにする。

全体を大きく分けると3つのステップになる。

  1. 発酵度とアルコール度数を理解する(A)
  2. モルトが持っている糖保有量(PPG)について理解する(B)
  3. 求めるアルコール度数から必要なモルトの量までを逆算する(私)

次にステップ3の逆算する手順を最初にまとめておく。

  1. ビールのアルコール度数を決める
  2. 使用する酵母の発酵度から初期比重(最終比重も)が決まる。
  3. 使用するモルトのPPGとマッシング効率から必要なモルトの量が決まる。

では最初のステップから始める。

ステップ1:発酵度とアルコール度数の関係

発酵度とはその名の通り、どれくらい発酵したかを示す数値だ。単位は%で英語はAttenuation。自分が持っている酵母のスペック欄を見ればApparent attenuationというところに数字が書いてあると思う。おそらくググっても出てくる。

前回使った酵母のスペックを見てみると、Apparent attenuationのところに80-84%と書いてある。これが予想される発酵度だ。きっぱり決まっていないのは、マッシングの仕方や発酵温度などによってブレが生じるからだ。
式は以下の通り。

発酵度(%)=(初期比重−最終比重)/(初期比重−1)×100

つまり発酵度とは比重がどれだけの割合で減ったか、という数値である。
200個のりんごの内、20個食べたら、残りは180個だ。食べ食べ度は10%と言えるだろう。
式にすると
10%=(200-180)/200×100
となる。
比重の場合は1.050というふうに小数点以下が重要なため、−1という操作が必要になるが、そもそも意味としては、減った分がもともとに対してどれくらいか、ということを示している。比重を使って計算するときには、小数点以下第2位と第3位(1.050なら50の部分)だけを引っ張ってくる時がちょくちょくあるので慣れておこう。

次にアルコール度数の計算式を見ていく。

アルコール度数=(初期比重−最終比重)×131(定数)

どうしてこうなるかは、アルコール度数という概念を作った人に聞いてくれ。これに関してはそういう風になっているとしか言いようがない。ここで上の2つの式に共通する項目があるのに気づく。
(初期比重−最終比重)
という部分だ。
そして私たちは発酵度とアルコール度数を知っている。前者は使う酵母の袋を見ればいいし、後者は各々が勝手に決めればいい。
注意点としては、酵母のスペック欄にあるAlcohol tolerance(アルコール耐性)より高いアルコール度数は設定しないほうが懸命だ。

昔懐かしの連立方程式を思い出してほしい。
まずは発酵度の式を変形し、以下のようにする。

初期比重=(初期比重−最終比重)/ 発酵度 ×100 +1

次にアルコール度数の式を変形する。

②(初期比重−最終比重)アルコール度数 / 131.25(定数)

①の式の(初期比重−最終比重)の部分に②の式を代入する。
つまり求めたいビールの初期比重は

初期比重=アルコール度数 / 131.25(定数)/ 発酵度 ×100 +1

整理して

初期比重=(アルコール度数 × 100 / 131.25 × 発酵度)+1

というこことだ。

数値だけ見てもしっくりこないと思うので、具体例を当てはめてみよう。
王道のSafAle™ US‑05の発酵度は78-82なので間をとって80%ということにする。アルコール度数はよくある5%に設定する。このときの初期比重を計算してみる。度(%)を直すのに注意!!!

初期比重=(アルコール度数 × 100 / 131.25 × 発酵度)+1
初期比重=(   0.05   × 100 / 131.25 ×  0.8) + 1
    = 1.0476
    = 1.048

不安な人も多いと思うので検算してみよう。

発酵度が80%ということは
48 × 0.8 = 38.4:減る量
48 – 38.4 = 9.6:減った後の値
つまり最終比重は1.010(1.0096を四捨五入した)となる。
これで初期比重(1.048)と最終比重(1.010)が出たので、その差からアルコール度数を計算する。

アルコール度数(%) =(初期比重 – 最終比重)×131.25(定数)
アルコール度数(%) = ( 1.048 – 1.010 )×131.25
         = 4.987 = 5

疑い深い人もいると思うので、発酵度も計算しておく。

発酵度(%)= (初期比重−最終比重)/(初期比重−1)×100
発酵度(%) = (1.048 – 1.01) / (1.048 – 1) × 100
     = 0.038 / 0.048 × 100
     = 79.16

となり問題ないことが分かる。ところどころで四捨五入しているため、僅かなズレがでるのはご了承いただきたい。こだわる人は四捨五入の位置を変えればいい。

以上で第1ステップは完了だが、思ったよりも長くなっていしまった(丁寧すぎたかもしれない)ので記事を分けることにする。
分からないところがあれば、実際に手を動かしながら式を変形し、具体的な数値を当てはめ計算するのがオススメだ。


Q2 2020, 1010
Q1 2401

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