ヨーグルトでサワー・ビール造りBrewing Sour Beer with Yogurt

ビールを酸っぱくさせる方法はいろいろある。WyeastやWhite Labsの培養液を使ったり、サワー・マッシングをしたり。でも今回はヨーグルトを使った方法を紹介する。これなら家でも再現できるはずだ。参考記事のリンクは一番下に貼ってある。

Commons BreweryのヘッドブルワーであるSean Burkeの手法

  1. 醸造日の1週間ほど前に、ホップの入っていない麦汁を2L用意し、43℃くらいまで冷やす。
  2. スプーン1杯分のギリシャヨーグルトと麦汁をスターターに入れ、38℃くらいで4日間ほど放って置く。温度が低いほど酸の生成に時間がかかるが、54℃以上にはならないようにする。
  3. ph3.5-3.8を目標にする。乳酸菌は嫌気性なため、スターターは密閉し、撹拌も必要ない。これは雑菌の侵入を防ぐ意味もある。
  4. 醸造日はマッシングからロータリングまでいつもどおり行う。すべての麦汁をケトルに注ぎ、52℃くらいまで冷やす。その後、乳酸菌スターターを投入しケトルに蓋をする。仕込み日から3日後にはph3.6になっているだろう。phが目標に達したら90分ボイルする。長時間の煮沸は、ベースモルトにDMS前駆体を多く含むピルスナーモルトを使用しているため。
  5. ボイル後、14℃まで冷やしてから発酵槽に移し、クリーンなエール酵母(Wyeast 1007など)をピッチする。48時間後にビールを20度くらいまで上げ、発酵中はその状態を保つ。温度を上げたタイミング(ハイクラウゼンの状態)でカシスピューレを加えても良い。

※ヨーグルトには2種類の乳酸菌がある。ひとつは乳酸菌で人間の腸内に生息しているため消化にとても良い。もうひとつはカゼイ菌だ。この方法でより優勢なのは間違いなくこっちの方だ。かなり攻撃的な乳酸菌株で、麦汁に含まれる糖分を消費することに何の抵抗もない。この菌株はホモ発酵性であり、糖分のみを消費し、副産物として酸を生成するのに対し、ヘテロ発酵性の乳酸菌株は糖分を消費し、酸を生成するだけでなく、アルコールとCO2を生成するため、より重力を下げる。

    乳酸菌の種類についての翻訳記事はこちら“Kettle Souring : An Overview” by Top Crop

    よりカジュアルな手法

    1. 85gのDME(Dry Malt Extract)を使って1Lの麦汁を用意し43℃くらいまで冷やす。それと小さじ2杯のヨーグルトをフラスコに入れる。
    2. 37-54℃くらいになるように調整し、32時間ほど放置する。目標phは3.8。
    3. マッシングとロータリングを終えた麦汁13Lを50℃くらいまで冷やし、乳酸菌スターターを入れる。
    4. 35-52℃くらいを保つ。温度管理にはオーブンを使ってもい。
    5. 約3.5日後、phが3.6ほどになるのでボイルする。
    6. 後は同じ。

    乳酸菌スターターについての翻訳記事はこちら“Starters 101: Lactobacillus” by Top Crop

    Fast Sourという手法

    ファストサワーは、”Milk the Funk“というサイトを通じて広く知られるようになった技術で、自家製ビール造りに革命をもたらした。その秘訣は、醸造サイクルの早い段階で乳酸生成菌(主にラクトバチルス菌とペディオコッカス菌)の寄与を最大化することだ。これにより、ビールのアルコール度数が高くなる前に “酸っぱく “することが可能になる。

    美味しいサワービールを造るには、モルトのキャラクターとバランスの取れた乳酸、フルーティーなエステル、ドライな後味などを最大限に引き出しつつ、酢酸、汗臭い/バターっぽい発酵副産物、しつこい残糖などを最小限に抑えるような方法で、汚染をコントロールする必要がある。

    酸味を早く出すために、ベルリナーヴァイス(Berlinerweisse)をベーススタイルにする。理由は2つある。
    1つはアルコール度数が低いこと(多くの場合、アルコール度数は3%を下回る)、もう1つは味わいが非常にシンプルであることだ。アルコール度数が低いため、バクテリアは糖分をできるだけ多く、アルコールではなく乳酸に変えることができる。シンプルな風味は、このような急速な酸味付けプロセスで望むことができる最高のものであり、それを目指すのは容易である(注:ランビックのような複雑さを求めるなら数年は必要)。最終製品は軽くて酸味があり、そのまま飲んでも、他のスタイルのビールとブレンドしてユニークな調合を作ってもおいしい。

    Fast Sour Step 1: Kettle Souring

    通常より短時間の煮沸の後、乳酸菌の大きなスターターをケトルに直接投入し、43-49℃で12-24時間保持し発酵させ、麦汁のpHを3.5程度まで下げる。バクテリアを加える前に、バクテリアが死なない温度まで麦汁を冷やしたい: 最も手っ取り早い冷却方法は、煮沸の最後に冷たい精製水(食料品店でプラスチックの水差しで売られているようなもの)を入れることだ。

    ケトルサワーリングは、麦汁の中で増殖する細菌を無理のない範囲で正確にコントロールできる。ギリシャヨーグルトやprobiotic shots、Omega Labsの乳酸菌ブレンドから培養した独自のスターターを使えば、安全で効果的な酸味環境を完全にコントロールが可能。

    Fast Sour Step 2: Get Racked

    24時間のケトルサワーリングに続いて、酸性になった麦汁をガラスカーボイに移しさらに発酵させる。これらのステップのために、通常の醸造セットとは別の醸造器具、特に野生酵母やバクテリアを100%除菌するのが極めて難しいプラスチックやゴムの部品をいくつか購入するのが得策。

    この次の発酵には、サッカロマイセスとブレタノマイセスの酵母だけでなく、追加のバクテリアも必要だ。これには市販の自然発酵ビールの飲み残しを使うという方法がある。 Russian RiverのBeatificationや 無殺菌のベルギー産ランビック(商品名に “Oude “や “Classic “と付いているもの)がいいだろう。サワービールを作るためにサワービールを買うというのは少し奇妙に聞こえるしコストは上がるが、必要な培養液を手に入れるには最も簡単な方法だ。プラス面では世界クラスのサワービールを1本の80%飲むことができる。残りの20%はその見返りとしてはるかに多くのビールを与えてくれるだろう。

    330mlから375mlのボトルを楽しみ、沈殿物を含む残りの55-85mlをカーボーイに投入し追加発酵を始める。ある種のフルーティーなランビックを使えば、さらなる風味を加えることもできる。

    この発酵が始まって数週間経つと、ダイアセチルが発生することに気づくだろう。ダイアセチルは、すべての発酵で発生する人工的なバターフレーバーで、ペディオコッカス菌が混ざっていると非常に高いレベルで発生する。

    Fast Sour Step 3: Dry it Out

    3回目の最終発酵を行う。ブレタノマイセス酵母を大量に添加し、ビールをさらにドライにし、ダイアセチルを消化させ、酸味のあるベルリナーヴァイスが出来上がる。

    この段階で、標準的な瓶詰めをするか、砕いたフルーツやフルーツピューレをビールに加えるか、他の完成したビールとブレンドしてユニークなサワー・ハイブリッドを作ることができる。サワービールのボトルコンディショニングは、他の自家製ビールより高めの温度(21℃)で、やや長めに(3週間)行うのが、炭酸をしっかり含ませるのに役立つ。フルーツを加えてボトル・コンディショニングを行う場合、通常必要な量よりも多めの砂糖を使う覚悟が必要である。果実の粒子は核となり、溶解したCO2のほとんどを放出してしまうからだ。どんなビールでもそうだが、比重計で重力を測定し、少なくとも1~2週間は安定した数値が出たら瓶詰めする。1.010以下なら安全だろう。瓶詰め後、完全に調整されたら(2~3週間)、飲み頃となる。

    Fast Sourの具体的な手順とRecipe

    原材料
    ・dry malt extract:450g(2cups)
    ・2 row malt:1134g(2.5 pounds)
    ・white wheat malt:1134g(2.5 pounds)
    ・水道水:1L
    ・ヨーグルト:大さじ2
    ・フレッシュハーブ(ローズマリー、レモンバーベナ、レモングラス):28g(1ounce)
    ・375mlのwild ale(Lindeman’s Cuvee Reneeなど)
    ・Brettanomyces Bruxellensis ( White Labs 650 or Wyeast 5112):1 package
    ・殺菌剤の小さな入れ物
    ・精製水:7.5L

    手順

    1. 中くらいの鍋に水1リットルを入れて強火で沸騰さ火からおろし、ドライモルトエキスを完全に溶けるまで混ぜる。再び沸騰させて10分後、鍋に蓋をして冷たい水道水をかけ、49℃まで冷ます。冷めたらギリシャヨーグルト大さじ2を消毒した1.8Lのガラス瓶に入れ、冷えた麦汁を上から注ぐ。容器の上部をホイルでゆるく覆い毛布などで断熱する。できるだけ43度に近い温度で60-72時間保持する。
    2. 鍋に5.7Lの水を入れて71度に熱し、すべての穀物(2268g)を加え、ダマにならないようにかき混ぜる。蓋をして火からおろし、厚手のタオルで鍋を包んで1時間温度を保つ(マッシング)。
    3. その間に別のケトルでもう5.7Lの水を77度に温める(スパージ用)。マッシュタンを中火で79℃まで上げ火を止める(マッシュアウト)。
    4. ロータリングとスパージングを行う。
    5. この時点でケトルには約11Lの麦汁があるはずだ。強火で沸騰させハーブを混ぜる。15分後、蒸気の匂いを嗅いで、調理したトウモロコシの香り(DMS)がないことを確認する。目的は、麦汁を消毒し、収量をあまり落とさずにDMSを飛ばすことである。
    6. 沸騰したら火を止め麦汁に温度計を入れる。冷蔵庫で冷やした精製水7.5Lをケトルに注ぎ、量を19Lに増やし、温度を49-54℃に下げる。目標温度になったら、乳酸菌スターターの液体と固形物をすべて直接ケトルに注ぐ。ホイルかラップでしっかりと覆い、厚手のバスタオルで断熱し、十分な酸の形成を確保するために24時間温度を保つ。発酵は熱を発生させるので、乳酸菌の理想的な生育温度である38℃以上を一晩保つには、簡単な保温で十分である。
    7. 24時間後、発酵用カーボーイを殺菌し、麦汁を注ぐ。サワービールの残り85ml強(瓶の下4分の1程度)をカーボーイに注ぐ。上部にエアロックとゴム栓を付け、16℃後半から21℃前半の涼しい場所に置き、酵母の活性がバクテリアの繁殖や酸味よりも高まるようにする。
    8. 仕込み日から2週間くらいたったら、サワービール用のピペットを使って定期的に味見をする。ビールが酸味と(ダイアセチルによる)軽いバターの風味を併せ持つようになったら、ブレタノマイセスを加える。
    9. ブレタノマイセス添加後、1週間ほどしてからピペットで再度味見する。バターのような風味が消え、ビールの味がいい感じなら、消毒した比重計、試験瓶、ピペットを使ってサンプルを取る。比重が1.010以下であれば、ビールを樽や瓶に移す準備ができている。そうでない場合は目標値に達するまで放置する。
    10. ボトルコンディショニングで炭酸を入れる。

    注意事項
    ・プラスティックやゴムでできたパーツはサワー用にしたほうがいい。コンタミの危険性は常にある。

    他のサワーのレシピの翻訳記事はこちら“Kettle Sour with Phantasm” by Top Crop


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