本屋でぷらぷらしていたら自然酵母で作るパンの本を見つけ、レーズンから酵母を収穫できることを知った私は、材料を揃え、レーズン酵母スターターを作った。それから2週間、発酵容器が空き、レーズンもいい感じに浮いてきたので、ついにレーズン・イースト・エールを仕込むことにする。ついでにホームブルーイングのタイムスケジュール的なものも記録したので、これからホームブルーイングをやってみたいと思っている方は、何をするのにどれだけ時間がかかるのかの参考にしてみてください。
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11:00:キッチンの片付け
11:15:スターターの確認。見た目は良かったが、温度が高すぎた。ピッチ温度までゆっくりと下げることにする。
11:30:寸胴にストライクウォーターを入れ、ガスコンロに火を付ける。モルトを量り、その温度からストライクウォーターの温度をサイトに計算してもらう。いつもだいたい70℃ちょっとだ。たまに水の温度を確かめながらマッシュホッピングで使うホップを量り、発酵容器のプラスチックバケツなどにサニタイザーをいれ殺菌を始める。
11:50:マッシュイン。ついでにホップも入れる。ダマにならないようかき混ぜていると、なんだかいつもよりマッシュが多いような気がする。温度をはかると予想より少し高い。最初にいれえる水の量を間違えたんだと思いレシピを調整。マッシング温度を上げ、スパージングの水量を減らす。ミスを忘れるためにとっておきのYrocco Beerを開ける。少し前に買ったグラスセットのやつだ。スタイルはHoppy Belgian Pale Ale。飲んだ感覚としては柑橘系トロピカルのHoppy Saisonだった。驚いたのはそのジューシーさ。ボトルコンディショニングには、アロマやフレーバーが全体的にさっぱりしているイメージを持っていたが、これは違った。バイトでビールを詰める日は、タンク直送を少し飲ませてもらうのだが、それと同じくらいのフレッシュさを感じられた。とっても不思議。匂いと味だけでブルワリーを思い出した。マッシュアウトが終わったら、5mのリサーキュレーション、20mのレストをして比重を量る。
13:35:ロータリング&スパージング開始。ここで本当はミスがなかったことが発覚する。レシピをまた調整。急いで追加のスパージング用のお湯を沸かす。私が使っている寸胴鍋は内側に水量のメモリがついていないため、たまにこういうことが起きる。次の仕込みまでにパドルにメモリを書くことにしよう。
14:15:スパージング終了。私はマッシングもボイリングも同じ寸胴鍋でするため、ここで一旦掃除タイムを挟む。使用済みモルトをビニール袋にまとめ、風呂場で寸胴鍋を洗う。その後、きれいになった寸胴鍋に寄せておいた麦汁を突っ込みコンロに火を付ける。比重を量り、マッシング効率を確認する。76.7%と少し低めだった。ここであまりにも比重が低い場合はボイルの火力をあげ、初期比重(OG)を調整する。そうした場合バッチサイズが変わる(少なくなる)ので、酵母の量も再計算する必要がある。今回はそこまでではなかったのでレシピ通りの火力でいくことにする。
14:45:ボイリング開始。最初のホップを投入し、次のホップを計測。ここから少し暇になってくる。が、ボイリングは麦汁があふれる可能性があるので(幸い私はまだ経験していない)たまに様子を見る。予定通りにホッピングし、@15mで清涼剤のアイリッシュモスと殺菌のためチラーを投入。@10mで蛇口の中を殺菌するため少しリサーキュレーションする。
15:45:ワールプール開始。チラーで温度を85℃くらいまで下げホッピング。その後20m放置。だいたい65℃くらいまで勝手に下がる。
16:05:チル開始。ピッチング温度の25℃をターゲットに麦汁を冷やす。
16:15:発酵容器に移送。この時ジャバジャバと注いでエアレーションをする。見えにくいが温度は22-24℃くらいだった。想定内の結果だ。仕込み前は33℃だったスターターの温度も20℃といい感じに下がっている。麦汁と酵母に温度差がありすぎると、ショックで酵母が死ぬ。目安は10℃とどっかで見たが、理想は5℃以内に抑えたい。
16:30:イーストピッチ。何を血迷ったかレーズンごと発酵容器に投入。理由は3つある。1つはこうすればスターターが不十分でも発酵するのではないか、という安全策的な理由。1つは最近赤ワインの作り方を知って、こういうのをやってみたかったから。1つはレーズンの味がするかどうか気になったから。アンバーや黒系のビールの説明で「ドライフルーツのような」というのを見るが、実際にドライフルーツを漬け込むとどうなるのか気になった。
※マセラシオン / Maceration(仏)
赤ワインのアルコール醗酵が始まってしばらくすると並行して、果皮・種子から色素と渋みが出てくる。この過程を『マセラシオン(醸し)』と言う。(白ワインには無い過程)
醗酵が始まって3〜4日経つと、ブドウの果皮、種子から赤ワインの色素成分であるアントシアニンが、種子から渋みの主成分であるタンニンがアルコール醗酵中の液体に溶け出てくる。この工程をマセラシオンと言い、スムーズに進める為に、醗酵槽の上部に溜まる果帽(果皮や果肉)をかき混ぜたり(=ピジャージュ)、タンク下部の果汁を抜いて液面上から散布したり(=ルモンタージュ)する。
出典:winelink”マセラシオン“
16:45:5mのエアレーションを経て、バケツの上の穴にサニタイザー入のエアロックを装着し、仕込み完了。仕込み開始から約6時間。こんなもんだと思う。あとはゆっくりと掃除をするだけだ。寸胴鍋を軽く洗いお湯をため、酸素系漂白剤、チラー、マッシングで使ったストレーナー、移送用チューブを放り込んで放置。すすぎはその日の夜に行う。ちなみにスターター用の入れ物(スクリューキャップの保存容器)はダイソーで買ったのだが、80℃くらいのお湯をいれたらベコベコに変形したので、皆さん気をつけて。
レシピ
Style / Raisin Yeast Ale
ABV / %
IBU / 28
Name | PPG | Ratio |
Pilsner | 36 | 100 |
Name | AA | g/L | |
Hallertau | 7.8 | 1 | Mash |
〃 | 〃 | 1 | @60 |
〃 | 〃 | 1 | @20 |
〃 | 〃 | 1 | Whirlpool |
Name | Type | Attenuation | Optimum Temp | Pitch Temp | g/10L |
Risin Yeast | Liquid | 70? | 20-30? | 25 | 7.5 |
マッシング
67℃30m, 70℃30m, 78℃10m。
水質調整はしていない。上述したとおり、勘違いが色々あってマッシング温度を変更した。本来は65℃30m, 69℃30m, 78℃10mの予定だった。前回のマッシングの際に、30分のレストで予想よりもマッシュの温度が下がっていたため、少し温度を上げてする予定だったが、更に温度を上げる結果となった。勘違いによりスパージングがもたつきマッシング効率は76.7%。
今回もマッシュホッピングしたが理由は特にない。
ボイリング
ここは前回と変わらない。
出汁パックなしでホッピング。
マッシング効率がほとんど予想通りだったため、火力も予定通り。
ワールプール
85℃付近で出汁パックを使わずホッピング。
イーストピッチ
こちらの記事”White Labsとレーズン”の下の方で書いた通り、今回作ったレーズンスターターはドライイースト6g分だった。発酵容器に移送された麦汁は8Lなため、ピッチレイトは7.5 g/10Lとなる。この値はエール用ドライイーストとしては普通の値だ(私が使ってるドライイーストの推奨ピッチレイトは8-9 g/10Lがほとんど)。
発酵プラン
今回の懸念点は3つある。
・1つ目は発酵温度だ。パンの本には20-30℃で自然酵母はよく発酵するとあったので、主発酵もこの温度帯でする予定だが、味としてどうなるかはわからない。
・2つ目は発酵度だ。普通のエールイーストだとたいていは80%前後だが、レーズンに付着していた酵母がどうかは分からない。いわゆる野生酵母(ブレット)の場合は発酵度は90%近くなり、そのスピードはとてもゆっくりだ。樽にビールを長い期間寝かせる理由の1つがこれ。レシピを作る際はは70%は行くだろうとふんで組んだ。そのためモルトの量がいつもより増え、今回の勘違いに繋がった。
・3つ目は発酵期間だ。どうなるか分からないので、とりあえずは1ヶ月ほど様子を見る予定だが(旅行を控えているので毎日は比重を測れない)、またカビが生えないことを祈る限りである。さすがに発酵容器の中にカビが生えたら、それは捨てるしかないだろう。そもそも発酵が始まらない可能性だってあり得る。そうなったら温度をなるべくあげて、それでもだめだったら、、、その時に考えよう。
まとめ
色々と分からないことは多いが、ひとまず無事仕込みが完了して何よりである。日本語で「レーズン酵母 ビール」と調べてみると、いくつかのブルワリーがヒットする。どれも自然派だ。自然派、という言葉自体に興味はないが、その考え方は結構好きである。結局「その土地ならではの酒」というのはブランディングとしてはもちろん、ロマン的なかっこよさも秘めている。いわゆるテロワールだ。ワインっていいよね。最近はビール以外の酒造りにも興味を持ち始めた。日本のSaisonってどぶろくでは?なんて考えたりして、とにかくよくわからない。とりあえず発酵開始のぷくぷくを早く見たい。
追記
翌日の朝、発酵開始を確認。なんなら昨日の寝る前(ピッチから約8時間後)にぼこぼこ聞こえた気がする。発酵容器の温度が22-24℃ほどだったので、電気アンカの出力を”強”から”中”に変える。これで20℃前後になるはずだ。
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